パラケルスス(Paracelsus)
本名:テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム(Theophrastus Philippus Aureolus Bombastus von Hohenheim)
1493年か1494年 - 1541年9月24日
スイス、アインジーデルン生まれ
医師・錬金術師
パラケルススとは随分変わった名前だが、大錬金術師の名前としては相応しかろうなどと思っていたが、本名はホーエンハイムなのだと、最近になって知った。古代ローマの医師ケルススを超える、という意味だそうである。
ホムンクルスを作ったという伝説や後世のうさんくさい偽書のせいで、近現代のファンタジーなどには悪の魔術師のように出てくることが多いのだが、実は医者としての顔の方が本来のようだ。中世においては科学と錬金術は渾然一体のものであったから、医者が錬金術を研究するのも決して悪魔的な行為ではない。
「錬金術」という言葉は、日本語では「金」が入っているため、なんだがペテン師のようだが、英語ではal-chemy、化学(chemistry)、である。
現代の日本のコミック「鋼の錬金術師」には、「ホーエンハイム」という錬金術師と、「ホムンクルス」「賢者の石」が登場する。まったくのファンタジー作品なのだが、錬金術師を魔法使いといっしょくたにせず、真理を追い求める科学者としている点では、パラケルススも異論はあるまい。
ボルヘス編纂の「バベルの図書館」シリーズの中に、ボルヘス自身の短編を集めた『パラケルススの薔薇』という本がある。イタリアの原書がどのようなデザインだったかはわからないが、日本版「バベルの図書館」はなんとも魅惑的なシリーズで、本は縦に長く、くすんだ青い表紙には、錬金術を思わせる秘密めいたシンボルや幻想的な動植物の絵が、少ない色数で刷られていた。中学生の頃、図書館でこの本を見つけ、何度も借り出しては、読みもしないのに自分の傍らに置いていた。たぶんそのせいもあって、「パラケルスス」という言葉に、過剰に秘密めいたイメージをもっていたのだろう。
ちなみに「バベルの図書館」は、現在は古書でないと手に入りにくいようだが、『パラケルススの薔薇』はまだ書店にあることを知って、さっそく注文した。その悪魔的な外観のせいなのかどうか、あれを自分の物にできる日がくるとは思いもしなかったのだが、こうして大人になって、今少しずつ、自分の理想のバベルの図書館を作っているのだ。
今朝、「ヒトES細胞大量培養に成功」(asahi.com)というニュースを伝えるメールで目が覚めた。
そうだ、現代のアルケミスト達は、今も人体生成の夢を追いかけていて、少しずつ、真理に近づいているのだった。
クローンや代理母など今では珍しくもないが、倫理的論議の紛糾は解決に至っていない。人間の秘密を知りたいと思う心は、悪魔的なのだろうか?神に近づきすぎたバベルのように、いつか罰を受けるとしても。
参考:
「パラケルススの薔薇」ホルヘ・ルイス・ボルヘス (著), 鼓 直 (訳) /国書刊行会
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