*オカルトと怪物*アーカイブ

Angels & Demons (Robert Langdon)
Angels & Demons
posted with amazlet at 09.01.13
Dan Brown
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ノーベル物理学賞関連のテレビ番組を見ていたら、スイスとフランスの国境をまたぐ陽子加速装置の話題が出ていて、二年ぐらい前に読んだサスペンス小説『Angels & Demons』(ダン・ブラウン『天使と悪魔』)のことを思い出しました。『ダヴィンチ・コード』の前のお話ですね。

事件はこの装置のある実在の施設CERNで科学者が殺され、加速器によって生み出された反物質が盗み出されるところから始まります。ラングドン教授と共に謎を追うヒロインは、殺された科学者の娘でなのですが、父親と共に研究を完成させた科学者であり、CERN内のハタ・ヨーガのグルである、と紹介されます。
この時に、学者でヨーガ・グルってなんだかカッコいい。。と思ったのが、ヨーガの指導者資格をとろうと思ったきっかけだったのでした。そういえば。

宗教と科学という重要な問題を扱いながら、『ダヴィンチ・コード』と同様オカルトや美術ネタがいっぱいで、マニアにはたまらない内容となっております。

CERNといえばWeb発祥の地だしね。。施設内体験ツアーとかあるらしいので、いつか行ってみたいです。


幻想博物誌
幻想博物誌 (1983年)
posted with amazlet on 07.06.15
渋沢 竜彦
河出書房新社 (1983/10)

中学生の頃、澁澤龍彦氏のオカルト系エッセイに夢中になっていたことがある。河出書房の文庫版のシリーズで、魔術的な図版の表紙や『黒魔術の手帖』といったような秘密めいたタイトル、手になじむサイズと手ごろな薄さも好きだった。
それも最近は手に入りにくくなったり、装丁が変わってしまったりしているようで、いくつか手放してしまったのが悔やまれる。

内容の概略については、著者の言葉を引用したい。

本書『幻想博物誌』は1975年1月号から1976年12月号まで、2年間(24回)にわたって雑誌「野性時代」に連載されたものである。博物誌といっても、ここに採りあげたのはもっぱら動物で、その動物も、神話や伝説に登場する架空の動物から実在の動物にいたるまで、種々雑多である。

どんなものが取り上げられているかと言えば、例えばスキタイの羊。スキヤポデス。セイレーンにクラーケン。かと思えば、蟻に象にドードー鳥など、よく知られた動物も登場する。彼らとて、かつては不思議な習性があると信じられ、伝説を持っていたのだ。

著者はただ興味の対象としてこれらの動物たちを紹介しているだけでなく、なぜそのような伝説が生まれるに至ったかまでを、独自の視点で考察している。膨大な知識に裏づけられながらも、気軽に読めるエッセイである。

ここに登場する動植物は、現代のファンタジーのようにただ読む者を驚かせるために創られたわけではなく、中世以前には実在すると信じられ、歴史家や博物学者が大真面目に記録してきたものなのだ。
著者が敬愛し、この本でもしばしば引用されるプリニウス然り、である。

澁澤氏の幻想小説を読むと、氏のエッセイ群に登場するイメージによく出会う。
それも、あからさまな怪物ではなく、渦巻きやら、左巻きの貝やら、玉や香りなどのイメージの繰り返しや、魂と異世界との共感のような、シンボリックな類似性として現れることが多い。

かつて怪物がいたとかいないとか、そんなことではなく、人類の深層に共通してあるイメージが神話や怪異譚を生んでいることをよく理解しながら、それを愛している人なのである。

Paracelsus.jpgパラケルスス(Paracelsus)
本名:テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム(Theophrastus Philippus Aureolus Bombastus von Hohenheim)
1493年か1494年 - 1541年9月24日
スイス、アインジーデルン生まれ
医師・錬金術師




パラケルススとは随分変わった名前だが、大錬金術師の名前としては相応しかろうなどと思っていたが、本名はホーエンハイムなのだと、最近になって知った。古代ローマの医師ケルススを超える、という意味だそうである。

ホムンクルスを作ったという伝説や後世のうさんくさい偽書のせいで、近現代のファンタジーなどには悪の魔術師のように出てくることが多いのだが、実は医者としての顔の方が本来のようだ。中世においては科学と錬金術は渾然一体のものであったから、医者が錬金術を研究するのも決して悪魔的な行為ではない。

「錬金術」という言葉は、日本語では「金」が入っているため、なんだがペテン師のようだが、英語ではal-chemy、化学(chemistry)、である。

現代の日本のコミック「鋼の錬金術師」には、「ホーエンハイム」という錬金術師と、「ホムンクルス」「賢者の石」が登場する。まったくのファンタジー作品なのだが、錬金術師を魔法使いといっしょくたにせず、真理を追い求める科学者としている点では、パラケルススも異論はあるまい。

ボルヘス編纂の「バベルの図書館」シリーズの中に、ボルヘス自身の短編を集めた『パラケルススの薔薇』という本がある。イタリアの原書がどのようなデザインだったかはわからないが、日本版「バベルの図書館」はなんとも魅惑的なシリーズで、本は縦に長く、くすんだ青い表紙には、錬金術を思わせる秘密めいたシンボルや幻想的な動植物の絵が、少ない色数で刷られていた。中学生の頃、図書館でこの本を見つけ、何度も借り出しては、読みもしないのに自分の傍らに置いていた。たぶんそのせいもあって、「パラケルスス」という言葉に、過剰に秘密めいたイメージをもっていたのだろう。

ちなみに「バベルの図書館」は、現在は古書でないと手に入りにくいようだが、『パラケルススの薔薇』はまだ書店にあることを知って、さっそく注文した。その悪魔的な外観のせいなのかどうか、あれを自分の物にできる日がくるとは思いもしなかったのだが、こうして大人になって、今少しずつ、自分の理想のバベルの図書館を作っているのだ。

今朝、「ヒトES細胞大量培養に成功」(asahi.com)というニュースを伝えるメールで目が覚めた。
そうだ、現代のアルケミスト達は、今も人体生成の夢を追いかけていて、少しずつ、真理に近づいているのだった。

クローンや代理母など今では珍しくもないが、倫理的論議の紛糾は解決に至っていない。人間の秘密を知りたいと思う心は、悪魔的なのだろうか?神に近づきすぎたバベルのように、いつか罰を受けるとしても。


参考:
パラケルススの薔薇」ホルヘ・ルイス・ボルヘス (著), 鼓 直 (訳) /国書刊行会


熊谷 惠雲 (vivian)
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