『ゴーラクシャ・シャタカ』和訳 第38〜第53頌。ムドラーについてです。
*()内はクヴァラヤーナンダ師による補足です。
38. 死への恐れから、ブラフマーはプラーナーヤーマに専心する。ヨガ行者やムニたちもそうするように、ヴァーユ(プラーナ)をコントロールすべきてある。
ブラフマーはシヴァ、ヴィシュヌと並ぶ創造神です。神様でも死を恐れるんですね。
ムニは釈迦牟尼のムニで、瞑想を中心とした修行を行う聖者のことです。
ヴァーユは風です。息はヴァーユであり、生命エネルギーであるプラーナでもあります。
39. 呼吸(ヴァーユ)が不安定なときは、すべてが不安定である。しかし呼吸が静かなときは、他も静かであり、ヨーガ行者は動かなくなる(サマーディに入る)。であるから、呼吸のコントロールを行うべきである。
呼吸と瞑想の関係です。サマーディは仏教用語では三昧と言いますが、禅定(ディヤーナ)よりも深い段階です。よく二つはご混同されますが、別の状態を表しています。
40. ハムサ(息)は左右の鼻孔を通り、36アングラ(=27インチ)まで出てゆく。これをプラーナ(出てゆくもの)という。
「息」と注釈されている「ハムサ」は鳥を意味します。鳥と魂や風のイメージがつながっているからでしょうか。
ちなみに、はじめの第38頌にでてきたブラフマー神の乗り物はハムサ鳥です。
「アングラ」は、サンスクリットで指の長さを元にした単位です。日本で言う「寸」のような感じですね。
仏伝にアングリマーラという、殺した人の指を切っては首飾りにする人物が出てきますが、アングリマーラは通名で、「指の首飾り」を意味します。
41.ヨーガ行者は人里離れた場所で、パドマアーサナで坐り、シヴァであるグルに従い、視線を鼻先に固定してプラーナーヤーマを修練するべきである。
自分のヨーガの先生を、ヨーガの神シヴァと思って従います。
指導者について行わなければ危険な修行だと言うことでもあります。
42. プラーナは体の中にあるヴァーユであり、アーヤーマとは抑制することである。ひと呼吸がプラーナーヤーマ(全体)をはかるので、(ひと呼吸でプラーナをブラフマランドラに導く)ヨーガは至高のものである。
プラーナーヤーマはよく呼吸法といわれますが、呼吸法によって生命エネルギーであるプラーナをコントロールすること、という方が正しそうです。
第30頌にも出てきた「ブラフマランドラ」は「ブラフマ孔」ともいい、スシュムナーの上端、頭頂にあるとされる孔です。
43. ヨーガ行者はパドマーサナで坐り、イダーからプラーナを吸い、できるだけ保持し、またピンガラーから吐き出す。
イダーはスシュムナーの左側、ピンガラーは右側にある脈管です。つまり、左の鼻の穴から吸って、右から吐く。沈静化させる月の呼吸です。
44.プラーナーヤーマ(上記のようなチャンドラーンガービャーサ)を行うときは、(白く輝く)乳の(ような甘露の)海のような丸い月を瞑想し、喜びを感じる。
左から吸うのは月(チャンドラ)の呼吸です。不老不死の甘露、アムリタをたたえた海として、満月を観想します。
45. ピンガラからプラーナを吸い、肺(ウダラ)を満たし、定められた通りに息を保ち、またイダーから吐く。
今度は右の鼻の穴から吸う太陽の呼吸ですが、息の保持が入ります。定められた通りとありますが、ここにはどれくらい止めればよいかは書いていません。
「ウダラ」は原文にはないクヴァラヤーナンダ師の補足ですが、お腹のことなので、腹式呼吸ということでしょうかね。
46. プラーナーヤーマ(上記のようなスーリヤーンガービャーサ)を行うときは、へそにある、燃え上がる炎の塊のような丸い太陽を瞑想し、喜びを感じる。
活性化する太陽の呼吸なので、今度はお腹の太陽を観想します。
太陽と月、ハタ・ヨーガでは重要なシンボルです。
47. 12マートラーの間続き、プラナヴァと一体になるプラーナーヤーマには、レーチャカ、プーラカ、クンバカの三つの部分がある。
「マートラー」はいろいろな場合に使われる単位ですが、ここでは時間の長さです。1マートラーはほんの一瞬です。呼吸法を1ターン行う長さが12マートラー、ということでしょう。
「プラナヴァ」とは「聖音」つまり「オーム」です。
「レーチャカ」は呼息、「プーラカ」は吸気、「クンバカ」は止息です。
ここでは吐く息が最初に来ていますが、何か意味があるのでしょうか。
48. プラーナーヤーマの長さは、下位のものは12マートラー、中位のものはその倍、最高位のものは三倍とされている。
プラーナーヤーマを、その長さによって三段階に分けています。つまり、36マートラーで1ターン行うのが一番良いようですね。
49. 下位のものでは、体からとても発汗する。二番目のものでは振動を感じる。最後のものでは、しばしばバッダパドマーサナで坐ったヨーガ行者は空中に浮揚する。
プラーナーヤーマの持続時間によって、その効果も異なるようです。
最後のは、日本ではあまりいいイメージないですけどね。。残念なことに。
50.プラーナーヤーマの実践の間、発した汗で体をこするとよい。苦味、酸味、塩味のものを避け、ミルクを主原料とする食物を摂るべきである。
ここで身体をマッサージする理由はよくわかりません。
刺激の強い食べ物は避け、滋養のあるミルクを摂るようです。完全菜食ではありません。
51.ゆっくりと息を吸い、同様にゆっくりと吐く。個人の許容量を越えて必要以上に息を保持してはならないし、急速に吐いてはならない。
無理せずゆっくり行います。ヨーガは苦行ではないということです。
52. (ムーラバンダによって)アパーナを引き上げ、それとシャクティすなわちクンダリニーを(スシュムナーを通じて)(プラーナとともに頭へ持ち上げ)合一させる。(これによって)あらゆる罪から解放される。
プラーナの中でもアパーナは下へ向かうエネルギーなので、バンダによって引き上げます。シャクティ=クンダリニーは会陰部あたりにある女性原理の力なので、頭頂にある男性原理の力に向けて引き上げるのです。
53. このように、プラーナーヤーマは、罪という燃料に対する火となる。それはつねにヨーガ行者によって、罪の海を渡る強い橋と呼ばれる。
つまり、プラーナーヤーマによって罪をも滅してしまう、ということです。
次は感覚器官を制御するプラティアーハーラです。
しかしゴーラクシャ・シャタカでは、それだけではないようです。



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