集英社
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太平洋戦争の特攻隊の生き残りで、在野の哲学者であった波多野一郎は、『烏賊の哲学』というとても変わった、とても短い哲学書を残しました。
児童書のような平易な文章で、自身の分身である「大助君」が夏のアルバイトを通して世界平和へのアイディアを得る、という物語です。
現在は本文より長い中沢新一の解説つきで、『イカの哲学』としてこれを読むことができます。
大助君はカリフォルニアのイカ冷凍処理工場でひたすら大量のイカと向き合ううちに、イカの命、イカの実存というものを感じるようになります。
イカを大量に捕獲するのは、食べるため。では、人はなぜ戦争で人をたくさん殺すのか?
大助君は、人間が戦争をするのは、思想という実体のない物に捕われて、相手の実存を感じていないからだ、という考えに至ります。仏教徒が動物を食べないのは、動物の実存を感じて憐れみをもっているから。
「相異なった文化を持って、相異なった社会に住む人々がお互いの実存に触れ合うということが世界平和の鍵なのであります(p.61)」
そして、人間以外の生命を尊重しない単なるヒューマニズムでは、戦争を止めるには不十分だというのです。
波多野一郎がこのような境地に至る事ができたのは、皮肉なことですが、戦争で死を目前にするという極限体験をしてきたからでもあります。
イカというのは不思議な生き物です。
ライアル・ワトソンは『未知の贈りもの 』の冒頭で、イカの不思議な生態について語っています。海上でのイカとの邂逅を通じて、知的生物は地球という知的システムの一部だという考えに至るくだりは、『イカの哲学』に通じる物があります。
真の平和のためには、我々は地球というエコシステムの一部だという事を、もっと感じる必要があるのでしょう。




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