アメリカ人医師でありながら、チベット仏教僧として修行を続けるバリー・カーズィン博士。
この度来日し、「チベット仏教から学ぶ生き方の智慧 --『危機とコンパッション』--
〜危機のときほど、他者に対する慈悲(コンパッション)を持つことで自身の幸福が生まれる〜」と題した講演が行われました。
バリー博士はとてもお茶目で暖かい方です。難しくなりがちな仏教哲学を、科学者らしく論理的に、分かりやすく順序立ててお話くださいました。
「危機」とは、私たちが陥る怒りや悲しみ。そんな時、私たちは視野が狭まり、閉じこもってしまいがち。いかにして心を開き、広い視野を持てるようにするか?
深い苦しみは、私たちが現実を正しく見ることができず、見かけと真実の間にギャップがあることから起こるもの。
「コンパッション」は仏教的には"慈悲"と訳されますが、これこそが、そのギャップを埋め、真実に近づき、苦しみを取り除くための智慧だとバリー博士はいいます。
コンパッションは、親が子を愛するような生物として当然のものから、見知らぬ人への愛、そしてさらには自分の敵に対するものまで、段階的に拡げていくことができます。
もちろん、一朝一夕にできるものではなく、オリンピック選手が日々トレーニングを積んで金メダルを手にするように、常に修練しなければなりません。
まずは、他の人がしてくれた親切を思い出す。相手の意図しない、結果として自分の助けになったようなことまで想いを馳せます。そして、仏教的輪廻転生の考えにより、他人も前世では自分の母親だったかもしれないと考える。さらには、自分を傷つけようとする敵でさえも、自分が成長するきっかけとなり、意図せず自分の教師となってくれていると考える。
そんな風に想いを巡らせるだけでも、その間は自分の悩みから離れることができます。
自分の怒りや苦しみを抑圧するのではなく、しっかりと向き合う。そしてコンパッションによって、歪んだ見せ掛けの世界から、真実に近づいていく。
近道はないけれど、心を訓練することで、苦しみから離れ、幸せになれるのだと教えられました。
バリー博士は6月〜7月にも再来日し、『入菩薩行論』研修会などを行ってくださるようです。
今回は研修には参加できなかったので、次回を楽しみに待つことにします。



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