中学生の頃、澁澤龍彦氏のオカルト系エッセイに夢中になっていたことがある。河出書房の文庫版のシリーズで、魔術的な図版の表紙や『黒魔術の手帖』といったような秘密めいたタイトル、手になじむサイズと手ごろな薄さも好きだった。
それも最近は手に入りにくくなったり、装丁が変わってしまったりしているようで、いくつか手放してしまったのが悔やまれる。
内容の概略については、著者の言葉を引用したい。
本書『幻想博物誌』は1975年1月号から1976年12月号まで、2年間(24回)にわたって雑誌「野性時代」に連載されたものである。博物誌といっても、ここに採りあげたのはもっぱら動物で、その動物も、神話や伝説に登場する架空の動物から実在の動物にいたるまで、種々雑多である。
どんなものが取り上げられているかと言えば、例えばスキタイの羊。スキヤポデス。セイレーンにクラーケン。かと思えば、蟻に象にドードー鳥など、よく知られた動物も登場する。彼らとて、かつては不思議な習性があると信じられ、伝説を持っていたのだ。
著者はただ興味の対象としてこれらの動物たちを紹介しているだけでなく、なぜそのような伝説が生まれるに至ったかまでを、独自の視点で考察している。膨大な知識に裏づけられながらも、気軽に読めるエッセイである。
ここに登場する動植物は、現代のファンタジーのようにただ読む者を驚かせるために創られたわけではなく、中世以前には実在すると信じられ、歴史家や博物学者が大真面目に記録してきたものなのだ。
著者が敬愛し、この本でもしばしば引用されるプリニウス然り、である。
澁澤氏の幻想小説を読むと、氏のエッセイ群に登場するイメージによく出会う。
それも、あからさまな怪物ではなく、渦巻きやら、左巻きの貝やら、玉や香りなどのイメージの繰り返しや、魂と異世界との共感のような、シンボリックな類似性として現れることが多い。
かつて怪物がいたとかいないとか、そんなことではなく、人類の深層に共通してあるイメージが神話や怪異譚を生んでいることをよく理解しながら、それを愛している人なのである。




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